Sarah Coventry & Emmons サラコベントリーとエモンズ

こんにちは。Rm Antiques店主のRieです。


それぞれの取り扱っているヴィンテージコスチュームジュエリーのメーカーやスタイルについてサイトより詳しく一つずつ説明していこうと思います。

第一回目は『Sarah Coventry & Emmons サラコベントリーとエモンズ』






Sarah Coventryジュエリーの方が一般的に人気が高いですが、実はその姉妹ブランドとして広く認識されているEmmonsの方が先に設立されました。Emmonsは1949年にCH Stuart Companyによって設立され、ホームパーティースタイルでのジュエリー販売形式を採用した企業です。

CH Stuart Companyは元々、Charles W. Stuartが設立した会社で、主にフルーツの木や花をメールオーダーで販売していました。この会社で働いていたCharles H. Stuart(以下、CH Stuart)の息子であるBill Stuartが、後にEmmonsを設立します。

Emmonsという名前は、CH Stuartの妻であるCalorie Emmonsから取られており、その後会社名は**Emmons Inc.**に変更されました。

Emmonsの設立から数ヶ月後、Bill StuartCharles H. Stuartは、同じくホームパーティー販売形式を採用したSarah Coventryを設立しました。どちらのブランドも「Fashion Leader」としてホステスが主催するハウスパーティーで販売され、ホステスは販売数に応じてリターンを受け取る歩合制で、社員割引などの特典もありました。



Sarah Coventryのパッケージ クリアケースのものが多い 他にペーパーボックスなど
それぞれの商品に番号と名前がつけられるので製造された時代などが調べやすいですね



Sarah Ann Coventryの名付けの由来

Sarah Ann Coventryという名前の由来については、いくつかの説がありますが、最も広く言われているのは、CH Stuartの孫または娘の名前から取ったという説です。しかし、CH Stuartの孫の実際の名前はSarah Coventry Bealeであり、名前が一致しないため、この説には疑問もあります。

他にも、Bill Stuartの姪が1949年に生まれ、その名前がSarah Ann Coventryに使われたという説もあります。

また、もう一つの説として、Coventryという名前は、Stuart一家が初めてイギリスに住んだ際の地名から取られたという説があります。これにより、ブランド名の背後には地名や家族の歴史が反映されている可能性があります。

Emmons: Sarah Coventryの高級ライン

Emmonsは、Sarah Coventryの少し高級なラインとして知られ、コレクターの間では一般的にSarah Coventryよりも高い価格で取引されています。そのため、Emmonsのジュエリーは希少価値が高く、特にパリュール(セットジュエリー)を揃えるのは難易度が高いことが多いです。



Emmonsパリュール dogwood 50年代 ©︎EMMONS刻印


Emmonsの初期の刻印は『EMJ』であり、1955年以降は『©︎EMMONS』が使用されるようになりました。Emmonsのジュエリーは自社で製造されることはなく、Providence Jewelry Companyが手掛けていましたが、その品質は非常に厳格に管理されており、高い信頼性を誇ります。

**"Good Looking & Easy"**というスローガンのもと、Emmonsは主婦層をターゲットにし、美しいジュエリーを手軽に楽しめることを提案していました。

また、1950年代には、Sarah Coventryが非常に人気を博していたため、EmmonsのホームパーティーイベントでSarah Coventryのジュエリーが販売されることもありました。

Sarah Coventry: 人気ジュエリーブランドの誕生

Sarah Coventryは、Emmonsのすぐ後に設立されたジュエリーブランドで、Emmonsと同様の販売スタイルを採用していました。TrifariCoroのような大手ジュエリーブランドとは異なり、専属のデザイナーを持たず、代わりにフリーランスのデザイナーDelizza and Elster (Juliana)など他のジュエリーカンパニーにデザインを依頼するスタイルを取っていました。

1960年代のSarah Coventryの成長

1960年代にはSarah Coventryは急成長を遂げ、非常に人気のあるブランドとなりました。この時期のジュエリーはコレクターにとって非常に価値があり、特に1960年代1970年代のアイテムは今でも人気があります。Sarah Coventryのホームパーティーに参加したことがない女性を見つけるのが難しいほど、当時はその人気が絶頂に達していました。

マーケティング戦略の成功

Sarah Coventryは、ゲームショービューティーコンテストの賞品としてジュエリーを提供することで、その知名度を大いに高めました。これが非常に有効なマーケティング戦略となり、ブランドの認知度を一気に広めることができました。

また、Sarah Coventryはアメリカ国内にとどまらず、イギリスカナダオーストラリアなどにも進出し、国際的にもその存在感を示しました。

女性ホステスの活躍

ブランドの初期には男性のホステスやファッションリーダーが多かったものの、1950年代にはほとんどのホステスが女性に変わりました。この変化も、女性顧客へのアプローチに大きな効果をもたらしたと言われています。

Midnight Magic 1957 色々なコスチュームジュエリー書籍で見かける人気ピース
4つに見えるラインストーンはつながった1つの大きなラインストーン。


Sarah Coventryの特徴的なジュエリースタイル

Sarah Coventryのジュエリーは、他のブランドに多く見られるきらびやかなパヴェスタイルとは一線を画し、特徴的なデザインが支持されました。特に注目すべきは、大きなマーキスカットのラインストーンや、カラフルで魅力的なカボション(丸いガラスや石)を使用した作品です。

個性を引き立てるデザイン哲学

Sarah Coventryのデザインには、「Fun & Eye-catching」「For the woman who dares to be different」というテーマが込められています。これにより、他のジュエリーブランドとは一線を画す、ユニークで個性的なジュエリーが多く生まれました。中には、モナリザなどの有名な絵画からインスピレーションを受けたデザインもあり、アートとファッションが融合した作品が並びます。

手頃な価格で個性的なジュエリーを提供

Sarah Coventryの最大の魅力の一つは、その価格を抑えた品質の良さです。高価なジュエリーに手が届かない多くの女性に、個性的で美しいデザインのジュエリーを提供し、「誰でも身につけることのできるジュエリー」を実現しました。

人気のコレクタブルピース

コレクターに愛されるピースも多く、その中でも特に有名なデザインは、Julianaが手がけたBlue LagoonTouch of Eleganceなどです。これらのジュエリーは、シンプルでありながらも存在感があり、今でも高く評価されています。

Sarah Coventry "Touch of elegance" ブローチ 1965 by Juliana
Sarah Coventry "Blue Lagoon" ブローチ 1964 by Juliana


Lady Coventry & Lord Coventry 65年〜

Sarah Coventry Lady Coventry 1965 "Theatre"

Lady Coventry ジュエリーボックス

60年代に入り、Sarah Coventryは時代の流行に合わせたポップなデザインのジュエリーを多く発表しました。しかし、それまでのクラシックでエレガントなスタイルを好む顧客層にも対応するため、新たにLady CoventryLord Coventryというラインを展開しました。

これらのラインは、伝統的なクラシックデザインを求める顧客のニーズに応えるために作られ、Lady CoventryLord Coventryという名前で特別なコレクションとして販売されました。これらのジュエリーには通常の刻印が施されているほか、専用のジュエリーボックスにはLady CoventryLord Coventryの名が刻まれており、その高級感とエレガンスを際立たせています。

ポップデザインとクラシックデザインの共存

60年代のSarah Coventryは、ポップアートモダンデザインを取り入れる一方で、伝統的で洗練されたクラシックデザインを求める顧客にも焦点を当てており、この2つのスタイルをうまく融合させることに成功しました。Lady CoventryLord Coventryのラインは、まさにその一例であり、時代の流れに合わせた革新と、伝統を大切にしたスタイルが見事に調和しています。

スターリングシルバーのSarah Coventryジュエリー

Sarah Coventryは通常、ファッションジュエリーを手頃な価格で提供していましたが、60年代には珍しくスターリングシルバーを使用したブローチも販売されていました。これらのスターリングシルバーピースは、通常のラインストーンや金メッキジュエリーとは一線を画しており、より高級感のある仕上がりです。

特徴的なデザイン

これらのスターリングシルバーのジュエリーは、主に花や動物モチーフが採用されていました。例えば、花の形をしたブローチや、小さな動物たち(ウサギ、鳥、蝶など)のデザインが人気で、細かなディテールが施されていたのが特徴です。これらのブローチは、ファッション性が高いだけでなく、シルバーならではのクラシックで永遠の魅力を持っていました。

希少性とコレクターズアイテム

これらのスターリングシルバーのSarah Coventryのジュエリーはレアであり、コレクターの間では非常に高い評価を受けています。通常のSarah Coventryのファッションジュエリーとは異なり、スターリングシルバーは金属としての価値もあるため、他のジュエリーに比べて高値で取引されることがあります。



Sarah Coventry スターリングシルバー ブローチ 60年代


腕時計

80〜90年代、ホームパーティーではなく大衆向けのデパートなどで販売されたラインです。

Sarah Coventry と Emmons の終焉

Sarah Coventry と Emmons は、1960年代から1970年代にかけて、特にホームパーティー販売のスタイルで多くの女性に愛され、大変な人気を誇っていました。しかし、1981年に両社は倒産し、その扉を閉じました。これは、特に女性の社会進出と関係があると言われています。多くの女性が家庭から外に出て働き始め、かつてジュエリーを販売していたホステスの数が減少したことが大きな要因となったのでしょう。

変化する市場の中での苦境

  • 1950年代から1970年代まで続いたホステスによる販売スタイルが、社会の変化とともに時代遅れになり、ホステスの数が減少。さらに女性の社会進出によって、家庭内での売上が落ち込み、両社の経営に影響を及ぼしました。

復活と短命な再生 その後、1984年カナダの企業に買収され、**"Sarah Ann Coventry"**という名前で一時的に復活しました。しかし、再生されたブランドは90年代までしか続かず、長くは続きませんでした。この復活が短命だった理由としては、80年代後半から90年代初頭にかけてのジュエリー市場の動向や消費者の好みの変化が影響していたと考えられます。

刻印



Emmons (エモンズ) 1949-1981




Sarah Coventry (サラ コベントリー) 1949-1981 上の写真以外にもパターンあり
"©︎SARAHCOVENRTY" "SAC" など

雑誌広告



Sarah Coventry 雑誌広告 1970


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